辛かったのはガン患者さんの外国人家族とのコミュニケーション~現役ナースインタビュー<後編>

数年前、入院時に看護師さんが病室用に描いてくれた絵

都内有名病院にお勤めの大橋さんと佐野さんに外国人患者さんのお世話をした経験をお話していだきました。

外国人患者さんで困った事は?現役ナースインタビュー♪<前編>はこちら。

編集部:今までどういう場面(シチュエーション)で、「もっと英語が話せたら良かった」と思いましたか?

佐野さん(以後敬称略):例えば、ガンで入院してくる患者さんなど状態が悪くなっている方は、家族に言えないこととか、心にある不安などを聞いてあげるのは看護師の仕事だと思っています。

日本人だったらいくらでも聞いてあげるのに、外国人の患者さんだと聞いてあげることが出来なくてふがいない思いをしたことがあります。

大橋さん(以後敬称略):たとえ流暢に話せなくても心からのコミュニケーションが出来るかどうかが大事だよね。

佐野:カナダ人の患者さんがガンで入院していて、進行しているという話をした時に、奥さんと二人でボロボロ泣かれて、何も言えなくて本当に辛かったこともありますね・・・。

編集部:気持ちはきっと伝わっていたと思うけれど、やはり何か優しく声をかけてあげたいですよね。

ガンが進行するとどんな痛みが出るのでしょう?

佐野: 人によって、または出来た部位によって痛みは違うんですよね。

胸が締め付けられるような、呼吸が出来ないような痛み、しくしくつっかえるような感じとか。

部位によっても痛かったり、痛くなかったりするようです。

大橋:今や二人に一人はガンになる時代ですよね。子宮がんや卵巣がんの女性は、「最近太ってきたな~」と思って気付かない人が多いようです。

 

文化的な慣習の違いで困った事は?

編集部:国ごとの慣習や食事のことなどで困ったころはありますか?

佐野:以前、旦那さんが日本人でガンが進行していて、奥様がイタリア人というケースがありました。

旦那さんの死期が近づいてきてしまった時、もう話すことが出来ず、そして奥さんはイタリア語しか話せずに大変だったことがありましたね。

編集部:英語も通じなかったのですか?

佐野:本当にお互いに片言の英語で・・・という感じでした。

奥さんは自分の作ったものを最後に食べさせたい、という一心で、先生と相談することもなく、ミキサーを病室に持ち込んで野菜ジュースを作り始めた時はびっくりしました。

大橋:でも看護師としてはそれは止めないといけないものね・・。

佐野:いろんな話を聞いてあげたりできていたら、もっと心のサポートもできていたのに、と思います。

編集部:お二人とも患者さんの亡くなる場面に立ち会ってきている訳ですよね?

大橋:私は現在外科なので、基本元気になって治って帰ってもらうことが多く、最期に立ち会うことは少なくなりました。

佐野:私は内科なので、やはり入退院を繰り返して、徐々に悪くなっていく患者さんが多いです。

お盆過ぎたあたりとか、お正月過ぎだとかに体調を崩して入院してくる人は多いですね。 

編集部:人の意識として、無意識に年を越したいとか、なるべく家族に迷惑かけたくないとかいう気持ちってあるのかなあ、と思うことがあります。

大橋:そうですね、空気を読んでるというか、家族が休みのときに入院してくる人はなぜか多いです。

佐野:患者さんの亡くなる場面に立ち会うことというのは、やはり何度立ち会っても慣れるものではないです。

最近は一緒に泣いてあげるのも良いとされています。

長くかかわってきた患者さんには、「あんなことあったよね」「あの時は頑張ったよね」と話しかけながら身体を拭いてあげるんです。

編集部:去年、ご近所のご主人が倒れてしまったのですが、長期入院や何度もの手術、リハビリ病院を経てやっとか帰宅されました。

本当に弱っていたのですが、少しずつ良くなっているのを見て、奥様は子ども達の献身的なお世話、笑顔、ふれあいが本当に最高のレメディだと感じました。

編集部:ところで、外国人の患者さんが病院食を受け付けなくて困ったことはありませんか?

大橋:あります、ぜんぜん食べなかったりすることもあるので、ドクターが許すならば持ち込み食をOKとします。

佐野:なるべく洋食とか、牛や豚がダメ、などのリクエストは出来ます。

もちろん、疾患によってはカロリー制限や塩分制限がありますが。

佐野:日本人でも病院食は口に合わない人が多いから、仕方がないですね。

奥さんが毎日家で作ったものを持ってきたりしている例もあります。

「オレは妻の作ったものしか食わん!」みたいな昭和な方もいらっしゃるので、それは国籍関係ないのでは?(笑)

大橋:女性は意外と適応しますよね。プラスで何かおやつを食べたいから、旦那様がプリンを勝ってくるとかはありますよね。

女性は痛みにも強い印象があります。

佐野:そうそう、すぐに歩き出すよね、女性は。 同じ痛みでも男性のほうがスケール7とか言っている時に、女性は4とか。

女性のほうが我慢強いと思うのは、出産を経験していることもあるのかしら。

大橋:日本人はちょっと痛くても我慢するけれど、外国人は痛みをゼロにしてくれ、という人が多い印象もあります。

身寄りのない外国人の患者さんが亡くなる場面で困ったこともあります

編集部:宗教上の慣習で困ることはありますか?

佐野:基本、看取り方とか葬儀屋さんとかは家族にお任せしているので、あまりこちらが困ることはないです。

大橋:イスラム教の人などはあまりまだいませんし。お祈りを1日何回もしている光景とかも私はまだ見たことがないです。

佐野:私は一度本当に身寄りのない外国人患者さんが亡くなった時に立ち会ったことがあります。

友人達は何人か来てくれたものの、日本はおろか本国にも連絡をとっている家族はもういなくて、本当に困りました。

お友達の人達も困っていましたし、病院も上の人達がいろいろと相談していましたね。

編集部:逆のことを考えると、私たちも海外旅行をするときなど、連絡先などはきちんと分かるようにしておくことが大事ですね。

今まで外国人患者さんと接していて一番嬉しかったことは?

大橋:私は小さい時に香港に住んでいたんですね。その時に妹が病気になってしまったんのですが、私は日本語しか話せなかったので本当に心細かったんです。

その時に日本人のナースがいて、心から安心した想い出があります。

外国語を話してくれる安心感が分かっているから、私もナースとして英語、中国語、韓国語を出来るだけ学びたいと思いました。

編集部:小さい頃の体験がきっかけだったんですね。外国語の必要性は分かっていても実際に勉強して話せるようになる、という行動に移せる人はそう多くないですよね。

大橋:患者さんに「あなたがいてくれて良かった」と言ってもらえると、本当に嬉しいです。

佐野:やはり、看護師は「人の役に立ちたい」という気持ちが強い人が多いです。

それで自分の存在意義を確認したい、という気持ちもあるのかもしれません。

編集部:まさに奉仕の精神ですよね。でも夜勤などがあると身体が辛かったしませんか?

大橋:定年までいる人はなかなかいないですね。40歳から50歳で辞める人が多いのは、気持ち的にも身体的にもキツいからではないでしょうか。

佐野:急変とか緊急事態とか、いつでも予期せぬ出来事があることを覚悟していなくてはならないので、いつもドキドキしています。

どんな英会話をもっと習得したいと思いますか?

佐野:ルーティーンで話す内容、血圧測りますよ~、とか上はいくつで下はいくつで、みたいな当たり前に毎日行うこともきちんと覚えておきたいですし、例えば単純に「お大事に」ってなんというのが一番いいだろう?みたいなところで躓くこともあります。

編集部:確かにTake careだけではなくて、シーンによっていろんな言い方が出来ますものね。

例えばお国に帰る人だったら

Have a safe trip back home. Hope you get well very soon.

などという言い方も出来ます。

Please take your medication as prescribed and get well soon.   Good bye. 

また、お薬は処方の指示のとおりに飲んでくださいね。早く良くなりますように。

などと言うこともあるかもしれません。

大橋:先ほども言いましたが、きちんと知っておかなくては危険なこと、既往症とかアレルギーとかは、正しく聞き取れることも大切です。

編集部:今日は看護現場のことをいろいろとお伺いすることが出来て良かったです。

人の役に立ちたい、安心させてあげたいという一心でで外国語も習得しながら、人の立場にたって考えられる看護師さんでいたい、そんなお二人の気持ちが素晴らしいと思います。これからもご活躍を期待しています。

長い時間、インタビューさせていただき、本当にありがとうございました。

外国人患者さんで困った事は?現役ナースインタビュー♪<前編>

都内有名病院にお勤めの現役看護師、佐野さんと大橋さん